Bernard, Redding and Schott (AER, forthcoming)

恒例のReading Groupで、同僚が

Andrew B. Bernard, Stephen J. Redding, and Peter K. Schott,

“Multi-Product Firms and Product Switching,” American Economic Review, forthcoming.

を報告。


企業のHeterogeneityをモデルに入れて、
生産性が高い企業ほど輸出をするようになることを示したMelitz (2004, EMA)モデルの骨格を使って、
生産性が高い企業ほど様々な製品を生産する(つまり多角化する)、
という簡単なモデルを示して、
アメリカのデータで、多角化企業による製品の生産量が全体の生産量のかなりの割合を占めること、
現実のデータがモデルのインプリケーション通りになっていること、
データでは参入の多い製品ほど退出も多くなっているが、それはFirm specific shockやProduct specific shockだけでは説明できず、Firm-product specific shockがなければ説明できず、
実際にデータからも、Firm-product specific shockの代理変数(ある企業のある製品の生産高や販売し続けている年数)が退出を有意に説明する変数になっていること、
などが示されている。


生産性が高い企業ほど様々な製品を生産するというセレクションでなく、
さまざまな製品を生産することで生産性が高まったり、
製品分野は違うが技術が似ていたり販売網を共有できることで生産性が増加したり、
というReverse causalityの問題はRemarkとして述べられている程度で、エコノメ的にきちんと扱われてはいないし、
生産性が高い企業ほど多角化するというのも、かなりチョイネタな感じがするし、
生産性と多角化の程度を実証分析した人もこれまで結構いそうに思うのだが、
Meritzの流れで簡単なモデルを作って、
全体のかなりの割合を占める多角化企業による生産がこれまでのモデルでは考慮されていないこと、
Firm-product specific shockが現実を説明する上で無視できないこと、
などを示して、
AERにpublishableなレベルにまで引き上げている。
Melitzモデルに沿っているので、国際貿易の教科書にもExtensionとして載せやすいし、
この研究で焦点を当てたことによって、企業の多角化を扱う研究が増えるかもしれない。


自分を顧みると、
ちょっとアイディアを思いついても、
これはチョイネタだな、
とか、
かなり自明だな、
とか判断して、
結局追及しないことが多いのだが、
この論文は、
チョイネタに思えても、
きちんとモデルを書いて追及していくと、
それなりに言えることが見えてくることもあるし、
そこから新しい研究の流れが生まれてくることもあるので、
チョイネタだと自分で思っても、
一度モデルを書いてみて、追及してみることが大事だな、と感じさせられた。