インドの牛の糞

インドの農村の道の上には、
あちこちに牛の糞が落ちている(「くそ」と読むと下品に聞こえるので、「ふん」と読むことにする)。
新しくてねっとり感のあるものから、
干からびて乾燥したり、
車や動物や人に踏まれてぺちゃんこになっているものまで、
千差万別だ。


そんなインドの農村で、村人と話をしていたところ、
道に落ちているねっとり感がありありの糞を、
近くを歩いていた女性がおもむろに素手で拾って、
そのまま家に持って帰ってしまった。


「もしかして、うちらがふんでしまわないように、
気を使って片づけてくれたのかな」
と、無理矢理解釈してみようとしたが、
片手でがっつりと握って家まで持って帰ってしまったので、
そんな解釈も打ち砕かれた。


それで、同行してくれているカウンターパートのスタッフに、
「牛の糞って、何かの目的に使ったりする?」
と聞いてみると、
「あれは薬のようなもので、玄関とか床に塗るとよいとされているんだ。においが健康にいいと言われているし、殺虫・殺菌効果もあると考えられている。ほら、ここもそうだし、あそこもそうだ。」
と、歩きながらあちこち指さして教えてくれた。
確かに、よく見ると、玄関の前が一部色が違っていたりする。
水に混ぜて塗るんだそうだ。
これまで、インドの農村のいろんな家の中におじゃましたけれど、実は、その床には牛の糞が塗られていたのか、、、。


そして、次の家を訪問すると、家の中に招いてくれて、
カウンターパートのスタッフが、
「ほら、ここの床(土間)も牛の糞が塗られているんだよ」
と教えてくれた。
そして、牛の糞が塗られたその床の上で、村人にインタビューする我々であった。。。


インドの農村の道路の上に牛の糞が多いのは、
ほかの村人が拾って玄関や床に塗れるように、
あえて片づけたりしないのかもしれない、
などと無理なこじつけを考えつつ、
自然との共生について、ちょとだけ思いを巡らしてみたりした。
インドは結構来た気がしたけれど、まだまだ知らないことがいっぱいだ。。。