Galeotti and Goyal (AER, forthcoming)

恒例のReading Groupで、
Galeotti and Goyal, "The Law of the Few," AER, forthcomingを報告。



ネットワークの実証研究によれば、以下のような"the Law of the Few"という法則があるらしい。

  • In social groups, a majority of individuals get most of their information from a very small subset of the group (the influencers).
  • There are minor differences between the obserevable economic and demographic characteristics of the influencers and the others.


で、この論文は、各プレーヤーが、自分で得る情報の量と、誰とリンクするかを決定するゲームを定式化し、
そして、その均衡(strict equilibrium)のすべてで、"the Law of the Few"の性質が得られることを示している。
具体的には、

  • 同質のプレイヤーからなるゲームだとしても、均衡でのネットワークはcore-periphery型で、coreのプレイヤーは自分で情報を獲得し(coreのプレイヤーが複数の場合は、coreのプレイヤー同士でも互いにリンクしあう)、peripheryのプレイヤーは自分で情報を獲得せずにすべてのcoreのプレイヤーとリンクする
  • 自分で情報を得るプレイヤーの数には、全プレイヤーの数とは独立に上限があり、(自分で情報を得るプレイヤーの数)/(全プレイヤーの数)は、全プレイヤーの数を増やしていくにつれゼロに近づく
  • 情報獲得コストがほんのわずか低いプレイヤーがいると、そのプレイヤーが唯一のcoreとなり、Star型のネットワークとなる

ということが示されている。
つまり、まったく同質の個人だとしてもa majority of individuals get most of their information from a very small subset of the groupという性質は均衡として得られ、
influencerとそれ以外の人が決定されるには、ほんのわずかの情報コスト(あるいは情報からの便益)の違いで十分だということである。


そして、Aさんにリンクすると、Aさんが自分で得た情報だけでなくAさんが他の人から聞いた情報についても手に入る、というフレームワークで考えると、
以上の性質のほかに、

  • 自分では情報を獲得しないけれど、情報を獲得した人全員とリンクして、情報のHubの役割を果たすconnectorが存在する均衡が出てくる
  • 情報獲得コストが低く、ほかの人にとってもリンクするコストが低いような個人がいる場合には、その人が情報を得てHubにもなるが、情報獲得コストが低い人と他の人にとってリンクするコストが低い人が別の場合には、ほかの人にとってリンクするコストが低い人(Aさん)がconnectorとなり、情報獲得コストが低い人にリンクして情報をもらい、ほかの人はAさんにリンクするようになる

ということも導ける。


この論文の貢献は、
a majority of individuals get most of their information from a very small subset of the groupという現象が、個人の違いが全くない状況でもゲームの均衡として得られ、
かつ、誰がinfluencerになるかを決めるには、個人間のほんのわずかの違いで十分だということを理論的に示し、
非常にシンプルなセッティング(解を導く手続きは全然シンプルじゃないけど)でthe Law of the Fewが説明できることを示した点にある。
農村とかで、他の人とそれほど決定的な違いはなかったはずなのに、なんでこの人が情報Hubになっているんだろう、という状況に出くわすことも少なくないけれど、
それに対する説明の一つになるし、
技術革新や社会的変化によって情報獲得コストやリンクするコスト、他の人からリンクされるコストが変化したときに
村の情報構造がどう変化していくかを実証するときのベンチマークとなる理論だと思う。