抗レトロウイルス薬入り膣内殺菌ジェルのHIV予防効果

"African Studies Give Women Hope in H.I.V. Fight"
http://www.nytimes.com/2010/07/20/world/africa/20safrica.html?_r=1&emc=tnt&tntemail1=y

"A Promising Preventive"
http://www.nytimes.com/2010/07/21/opinion/21wed2.html?emc=tnt&tntemail1=y


New York Timesの記事によると、
抗レトロウイルス薬を入れた膣内殺菌ジェルと、
学校に定期的にいくことを条件としたCash transferが、
HIV予防に有効に働いたという研究がウィーンの学会で発表されたらしい。


膣内殺菌ジェルの方では、
対照群には、膣内殺菌ジェルの偽薬を与えてて、
ジェルの純粋な効果を測ろうとしている。


実験結果では感染率が40%下がったということだが、
実際にジェルを販売して本当に40%の感染率低下が見込めるかどうかには疑問が残る。
なぜなら、
ジェルに感染率低下の効果があると人々が思っているなら、
それまでHIV感染予防のためにコンドームを使っていた人が、
ジェルを使えば大丈夫だろうと思ってコンドームを使わなくなる可能性があるからだ。
コンドームに比べればジェルの感染率低下の度合いは少ないので、
コンドームを使っていたがジェルのみを使うようになったグループでは、
感染率が上昇してしまう可能性もある。


こういった代替効果も含めて全体的な効果を推定するには、
1.ジェルを与えるグループ
2.偽薬を与えるグループ
3.ジェルも偽薬も与えないグループ
を作り、
1と3を比べることで、ジェル利用によるコンドーム利用の低下も含めた全体的な効果を推定し、
2と3を比べることで、ジェル利用によるコンドームの低下がどの程度かを推定できるはずだ。
そして、1と2で、感染率の低下が本当に40%程度あるかどうか、再確認してみればいい。


ただし、
偽薬を与えることには倫理的な問題が伴うので、
1と2のグループに対しては、事前に、ジェルかもしれないし偽薬かもしれないということを通知しておく必要がある。
そうなると、
1のジェルをもらったグループも、自分のは偽薬かもしれないと思って安全のためにコンドームを使うようになるので、
コンドーム利用率低下の度合いは、本物のジェルだと思って使った場合とは異なりうる。
なので、
1a. 本物のジェルだと言ってジェルを与えるグループ
1b. 偽薬の可能性もあると通知してジェルを与えるグループ
を作って、
1aと3を比べて全体的な効果を測り、
1aと1bを比べて、偽薬の可能性がある場合とない場合とでコンドーム利用率の低下の度合いがどの程度あり、
それによって、偽薬を使った場合の実験結果がどの程度バイアスを生むかということも検証できるはずだ。