携帯型病気診断ツール

3月末に、
Harvard School of Public Healthで行われた
New Diagnostics for Infectious Diseases - From Bench to Bedside
というカンファレンスに顔を出してきたので、
いくつかのプレゼンを手短に報告。
技術進歩により、特別な設備がなくても病気を診断できるツールが生み出されてきており、
そういうツールを生み出している人たちが集まった研究報告。
その分野の人たちが集まっているので、
途上国の現場で実施されていることというよりは、
今開発中、スケールアップ中の技術を報告する、という感じが強かった。


"Microfluidis for global health diagnostics"
Dr. Samuel Sia, Assistant Professor of Biomedical Engineering, Columbia University
微量の血液や体液から、HIVや他の性病を診断。
機器の値段も100ドル以下で、PCとも簡単につなげて電子カルテの統合も簡単。
http://www.bme.columbia.edu/~sia/index.html
http://www.clarosdx.com/index.php



"From bench to bench (laboratory to waiting room): the Xpert MTB assay for rapid tuberculosis diagnosis"
Dr. David Alland, Professor & Chief of the Division of Infectious Disease, New Jersey Medical School, University of Medicine & Dentistry of New Jersey
結核の診断が2時間以内で可能で、耐性菌かどうかも分かる。
唾液をサンプルとして取るだけで、扱いも簡単で、バイオハザードの危険性も少ない。
診断の精度も、他の診断方法に比べて、診断者の技能やモチベーション、労働量に影響されにくい。
http://www.cepheidinternational.com/product-catalog/ce-ivd-tests/xpert-mtbrif/


"Photonics based Telemedicine Technologies toward Smart Global Health Systems"
Dr. Aydogan Ozcan, Associate Professor, Electrical Engineering Department, UCLA
LUCAS: Lensless, Ultra wide-field Cel monitoring Array platform based on Shadow imagingという概念を提唱し、

  • 検査レンズを使わず電子映像のみを使い
  • コンパクトでコストもかからず
  • 処理能力が高く
  • 検知能力も高く
  • 使うのに高いスキルを必要としない

途上国農村の遠隔医療に適した診断ツールをいろいろと開発。
今のところ、普通の携帯でマラリアHIVや水質まで診断できる装置などがある。
特別な機械や顕微鏡を使わなくても、
フォトにくすの技術を使って、
普通の写真にアルゴリズムをかけて画像処理を施すことで、
顕微鏡を使って撮影した画像と大差ない画像を生み出すことができる。
http://innovate.ee.ucla.edu/welcome.html
http://newsroom.ucla.edu/portal/ucla/ucla-researchers-advance-lens-61847.aspx
http://newsroom.ucla.edu/portal/ucla/cell-phone-prototype-of-lensless-77054.aspx


"Affordable diagnostics for global health: Or, why the bench seems so far away from patients"
CEO, Daktari Diagnostics
この団体は、
診断ツールの途上国の現場への開発・適用をミッションとした団体で、
現在、最初の製品であるHIV患者用のCD4数を測る機会を開発中。
ヘルスワーカーが途上国農村をあちこち回るタフな環境を想定して、
壊れにくく、
多少の動作環境の違いでもパフォーマンスに影響がなく、
誰が使っても同じ結果が出て、
多少汚い手で触ったりしてもびくともせず、
それでいてコストも安い製品を開発しようとしてる。
http://daktaridx.com/



いろいろと技術が出てきているが、
それでも、一つの病気を簡単な手順で正確に診断すること自体、結構難しいことで、
ヘルスワーカーが手に持って村を回って、
村人の病気の診断を補助してくれるような総合的な携帯機器の出現は、
まだまだ先の様子。