ヒーロー

先日、帰省した時に父からちらっと聞いたんだけど、
ふと思い出してネットで調べたら、岩手日報に紹介されてた。


津波にのまれながら市民救う 元釜石SWの森さん」
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110418_2

 勇敢な元ラガーマンの決死の行動が多くの命を救った―。社会人ラグビー釜石シーウェイブスの元選手で、釜石市新日鉄釜石製鉄所に勤める森闘志也さん(34)は、製鉄所前の水没した国道283号で、車内に取り残された人ら10人近くを次々と救助。自らも1度は津波にのまれながら、強靱(きょうじん)な肉体と精神力で、獅子奮迅の活躍を見せた。

 3月11日。大きな揺れの時、森さんは製鉄所構内にいた。近くの甲子川の水が猛烈な勢いで引いていく。海から約1キロ離れていたが「津波が来る」と確信した。

 国道283号は避難を急ぐ車で長蛇の列。「降りて逃げろっ」。何度も叫んだ。間もなく第1波。水圧でドアを開けられず、もがく人々。森さんは素手で窓ガラスを割り、まず5人を助け出した。

 その直後、背後から174センチの背丈を越える第2波にのみ込まれた。自分がどちらの方向に流されているかも分からない。フェンスにぶつかり九死に一生を得た。

 「もしフェンスがなければ、甲子川に落ちていた…」

 一命を取り留め構内に戻ると、車内に女性3人が取り残されているのが見えた。近くで男性1人も漂流。川と化した国道を渡り〝対岸〟の線路まで上がらないといけない。

 助けに行くには遠すぎる距離だったが「目の前で死にかけている人がいるのに放っておくなんてできない」とロープを手に泳いだ。

 対岸に着く。まず近くにいた男性の身の安全を確保。女性たちは浮いていた丸太につかまらせ、投げたロープを握ってもらい慎重にたぐり寄せた。

 引き上げる瞬間の水を吸った衣服の重さが忘れられない。今でも夢に見る極限の救助劇は「俺は絶対に死んではいけない」という確固たる思いに支えられていた。

 「家族や同僚を悲しませてしまう。自分に助けられた人も心に重荷を背負う」。そんな思いだった。

 10人近い命を救ってなお、胸中は複雑だ。目の前でいくつもの尊い命が奪われた。もっと助けたかった。「生き残った一人として、この経験を多くの人に伝えないといけない」と誓う。

(後略)


としや君は小学校、中学校時代の同級生で、
その頃、自分はどういうわけか「さっさん」(ひさきさん→さきさん→さっさん)と呼ばれていた。


中学時代ラグビー部だったとしや君は、
もちろん、前に書いたラグビー部の松島先生の教え子で、
超中学級というのでラグビーマガジンで見開き2ページで紹介されたりしてた。


運動能力は圧倒的で、
うちの中学は1学年100人で、男子はラグビー部、野球部、テニス部だけの3つだけしかなかったので、
市の陸上大会とかがあると、
この3つの部活から寄せ集められるんだけど、
としや君は市の陸上大会の100m競争でもいつも1番だった。
(ちなみに自分は1500mとか3000mとかで駆り出されたけどせいぜいぎりぎり一桁台の順位)
高校の時のラグビー部の友達が、
としや君のチームと対戦して、
「あいつ化け物だよ。いくらタックルしてもびくともしねえ。」
と嘆いてた。


としや君とは小学校、中学校と同じクラスのことも多くて、
結構いろんな思い出がある。
中学というのはみんな多感な時期で、
みんないろいろなことがあったけど、
中学3年のある日、腕に根性焼きを入れてきたのにはびびった。
(当時は結構不良がカッコイイみたいな雰囲気が(少なくとも男子の間では)あったし、
かくいう自分も漫画の「ろくでなしブルース」に影響されて
似たような学ラン来て学校に行って、
担任の先生に放課後放送室に呼ばれてこっぴどく絞られた経験がある)


中学3年の頃は、うちの周りも深夜になるとよく暴走族が走ってたし、
学校にいる時も学校の近くでブオンブオンというバイクのけたたましい音が時々聞こえるようになっていたので、
としや君がラグビーやめて暴走族に入っちゃったら嫌だな、
と複雑な思いを抱いていた。
でも、そんなことはなく、
高校でもラグビーをやって花園の全国大会にも出て高校JAPANにも選ばれた。


大学でもラグビーを続けて、中退したのは知っていたけど、
それが親父さんが事故に遭って重傷を負って、治療費や幼い妹の学費を稼ぐためだったということは、
新聞の記事を読んで初めて知った。



<今でも夢に見る極限の救助劇は「俺は絶対に死んではいけない」という確固たる思いに支えられていた。
 「家族や同僚を悲しませてしまう。自分に助けられた人も心に重荷を背負う」。そんな思いだった。>


「俺は絶対に死んではいけない」と思いながらも水の中に飛び込んでいく勇気、
本当に尊敬する。


震災が起きてから、ずっと、Mr.Childrenの「ヒーロー」の歌詞を何度も頭の中で繰り返していた。

例えば誰か一人の命と
引き換えに世界を救えるとして
僕は誰かが名乗り出るのを待っているだけの男だ

愛すべきたくさんの人たちが
僕を臆病者に変えてしまったんだ


愛する人々がいる中で、
自分が守っていかなきゃならない人がいる中で、
自分は本当に飛びこめるのか、と。


としや君、
あなたは僕の中で確固たる一人のヒーローになりました。