The Argument for a Single Bottom Line?

BOPビジネス系のサイト、Next Billionより。
http://www.nextbillion.net/blog/2011/07/11/the-argument-for-a-single-bottom-line

"The Argument for a Single Bottom Line"

BOPビジネスやCSRを行うべきかを考えるときに、
企業はシングルボトムラインで利益追求だけ考えていればよく、
その時の時間軸の取り方を長くすればいいだけだ、
という記事。
そして、
"Single Bottom Line"という最近の論文の
http://dalberg.com/sites/dalberg.com/files/sblfinal.pdf
こんな一節が紹介されている。

Say attaching a sanitation program to a roads project would improve by 5% a company's chance of winning another roads project that may be put up for bid in 10 years' time with 50% probability. If the future project would generate $20 million in profits, and we use a discount rate of 8% (3% time preference and 5% inflation) then the expected return from the sanitation program is roughly $230,000 [$20 million * .5 *.05 * 1/(1.08^10)]; the company should only invest in the program if it costs less than that amount.


道路建設に衛生事業加えて5%落札確率が増えるなら、
毎年1件×10年で考えたら落札確率は50%高くなって
CSRとしての衛生事業も実は利益追求に合致する、
ほら、全然難しいことじゃないでしょ?
みたいな感じで紹介されているが、
この議論、明らかにちょっとおかしい。


まず、
衛生事業をつけてその後の落札確率が高まるとすれば、
それは、その後の入札において、落札者の決定を行う政府が
その企業が道路建設を行えば衛生事業がつくことを期待してのもので、
そうなると、
道路建設のたびに毎回衛生事業をつける必要が出てくる。
落札金額をA、道路建設費用をB、衛生事業費用をCとすれば、
短期(1回限り)で考えた時の利益は
A-B-C、
一方、割引率δで時間軸を無限大に取った時の企業の利益は、
1/(1-δ)*[A-B-C]
になって、
短期でプラスの利益を生まない事業なら、
長期で考えても利益を生まないことになる。


また、仮に衛生事業を行っても短期的にもプラスの利益があり、
衛生事業をつけることで落札確率が上がるのであれば、
競争相手も衛生事業をつけるようになり、
結局、均衡での落札確率はほとんど変わらなくなるはずだ。


シンプルに見える議論の多くは、
暗黙の仮定が置かれててシンプルに議論が展開しているだけで、
実際にはその仮定が正しくないことも多い。