"No Toilet, No Bride"

先月のNEUDCで一番面白かったペーパーが、
世銀のDevelopment Impactブログで紹介されてる
(というか本人が紹介してる)。


http://blogs.worldbank.org/impactevaluations/haryanas-scarce-women-tell-potential-suitors-no-loo-no-i-do-guest-post-by-yaniv-stopnitzky


インドではSon preferenceが大きくて、
アマルティア・センなどの研究によりMissing Womenの話も大きく取り上げられたけれど、
Missing womenにより女性が男性より少なくなると、
結婚市場で女性が優位になるから
その分女性の交渉力がいくぶん上昇する可能性がある。
その可能性を、
インドでもっともSon preferenceの大きいHaryana州で行われた
「No toilet, no bride」キャンペーンを自然実験に使って検証した論文。


このキャンペーンが始まったのは2005年で、
データはその前後の2004年と2008年の家計調査データを使っている。
そして、キャンペーンによって結婚年齢の男子がいる家計ほどトイレの設置が増えたかどうかを検証。
結婚年齢の男子がいるかどうかは、キャンペーン開始によって変化しようがないので外生とみなせる。
ただ、たとえばインド全体で経済成長が高まってトイレへの需要が増大し、
特に結婚年齢の男子がいる家計ほどトイレ需要の高まりが大きい可能性もあるので、
Haryana州近隣のキャンペーンが行われなかった州と比べて
結婚年齢の男子がいる家計でトイレ設置の増加がより大きいかどうかを検証するという
Difference-in-difference-in-differenceの手法を採用している。


で、結果はキャンペーンによってトイレ設置が増加し、
かつその増加は、女性が男性に比べて少ない地域ほど大きい、
という結果が得られ、
Missing womenで女性が少なくなったことで女性の交渉力が上がったことを示している。


手法としては単純なんだけれど堅実で、
目の付けどころが面白い。
最近Developmentにも構造推定の波がきつつあるけれど、
KenistonのリキシャのBargainingの論文とか本当に目の付けどころが面白い研究以外は、
やはり経済学をきちっと勉強して構造推定のLiteratureを読み込んでいけば自然と思いつくテーマで、
単にQuantitativeに反事実的状況の結果をシミュレートしているだけのことも多いので、
手法は基礎体力として持っておいたうえで、
目の付けどころの面白い研究、
世の中の見方を変える研究、
というものをもっと意識していきたい。