フィールド実験の魅力

4月から、インドとアフリカで、フィールド実験を組み込んだ共同研究をする予定で、
年度末の原稿締め切りが近付いているにもかかわらず、
そのアイディア作りや準備にも結構エネルギーを使っている。

貧困層支援などのために、どのようなプログラムが有効なのか、
プログラム・デザインを考えていかないといけない。

Something new which has not discovered yet but is really important for improving society
を見出そうとすることは、
現地で活動している企業や、NGOや、多くの研究者が見出せなかった解決策を見出していくことでもあり、
知恵と知識と発想力と本質を見極める力と、もうあれこれ必要なのだが、
その解決策を見出していくことこそ、
開発問題を勉強して最終的に研究者という道を選んだ目的を達成することだと思う。
仮に今回、新しい決定的な何かを提示できなかったとしても、
この機会に実際に見たり、考えたり、議論しあったりしたことというのは、
今後も継続して行っていく、新しい決定的な何かを見いだそうとする旅の、大きな財産になるのではないかと期待している。

フィールド実験の魅力の一つは、そうやって自分たちが考えた新しいプログラムデザインが本当にうまく機能するのかを、
実際にやって統計学的に実証できること。
そして、その結果が思っていたことと違ったら、それをきっかけに、どんなメカニズムが働いてそうなってしまったのかを考え、見出していくことによって、
新たなプログラム・デザインを考える視点を得られること。
その過程で、現実の人々からのフィードバックが得られるという点も、重要。
普通の実証研究だと、新しいアイディアを考え付いたとしても、実際にそういうことをやっているような状況を見つけて、さらに内生性の問題もクリアしないといけない。
構造推定を使えば、推定した構造パラメータをもとに、新しいプログラムが本当にうまく機能するのかを検証できるけれど、想定外のメカニズムを見出して新たなプログラム・デザインを考えていくためのきっかけは、普通の実証研究同様、限られている。

フィールド実験が魅力的なのは、
「これまで行われていなかったけど世の中をよりうまく機能させるようにする新しい何か」
を実際にテストし、
そこからさらにフィードバックを得て、思いもしなかったメカニズムに行き当たり、
最終的にメカニズムを解き明かして、
「これまで行われていなかったけど世の中をよりうまく機能させるようにする新しい何か」
により近づいていけることかな。
単にインパクトを測っておしまい、だけではあまりにもったいなさすぎる。