Hendel, Nevo, and Ortalo-Magne (AER, forthcoming)

火曜の話だが、
恒例のReading groupで、同僚が以下の論文を報告。

Igal Hendel, Aviv Nevo, and Fracois Ortalo-Magne,

“The Relative Performance of Real Estate Marketing Platforms: MLS versus FSBOMadison.com,” Forthcoming, American Economic Review


従来の不動産エージェントネットワークを通して家を売る場合(ただしコミッションとして売却価格の6%を不動産エージェントがとる)と、
For-sale-by-ownerという、150ドルの登録料を払えば売り手がネット上で売り家を紹介できる新たなインターネットサービスを使って家を売る場合で、
売却価格や家を売るのに要する時間などがどう違っているかを実証した論文。
従来の不動産エージェントでは、ある不動産屋にいけば、ネットワークに参加している不動産会社のもつすべての売り家情報にアクセスでき、すでに巨大なネットワークが形成されている。
一方、For-sale-by-ownerの場合は、新しくできたもので、急速に成長してはいるものの、ネットワークの大きさ(扱っている売り家の数)は、まだ従来の不動産エージェントのネットワークには及ばない。
そして、この二つのネットワークの間では、売り家情報は共有されていない。


で、分析の結論としては、
売却価格に違いはないが、
従来の不動産エージェントのネットワークを使った方が、早く売れる、
というもの。
だからなんだ、という感じがしないでもないのだが、まあ、そういうことらしい。


マディソン市のデータだけを扱っているので、
For-sale-by-ownerのネットワークが大きい場合や小さい場合に、
パフォーマンスにどういう違いがあるのか、
また、それによって、人々のネットワークへの参加の程度、ひいては、ネットワークの形成の速度がどう変わっていくのか、
さらに、どのような環境的条件が、代替的なネットワーク形成を可能にし、その速度を速めるのか、
といった、興味深いと思われる視点が、まったく分析できていない。


ところで、2年半も前のトピックなのだが、
http://www.law.tohoku.ac.jp/~hatsuru/weblog/archives/uofc/econ/index.html
によると、
Levittは、
「なぜアメリカでは、不動産仲介のcommission feeは、どこに行っても、6-7%位で一定なのか?」という謎を解けたらJPEに載せてやる、
と言って回っていたらしい。


上のブログの内容をコピーすれば、

「不動産仲介にかかるコストなんて,大部分が固定費用でどこでも大して変わらないはずだから,コスト面から考えれば,例えば,NYのようなところでは,%が低くなり,地下の低い地域では%が高くなるのが素直。逆に言えば,NYのようなところで6-7%の手数料を取り続けていれば,新規参入を呼び込んで手数料が下がっていくはずなのに,なぜそうならないのか?」


ヒントは、
不動産エージェントがネットワークを共有している点にありそうな気がする。
6−7%の手数料が高くてもっと安い手数料の業者の新規参入を呼び込みそうでも、
もしそれより安い手数料を設定したら、その不動産業者にはネットワークを提供しないようにすれば、
安い手数料業者に行ってもいい家を見つけられる可能性は大幅に減るので、
結局、誰も手数料を下げるインセンティブを持たなくなる。
ただ、問題は、
この説明で競争価格から遠く離れることは説明できるが、
ネットワーク全体(あるいは不動産業者全体)の利益を最大化するような独占価格水準は地域ごとに違ってくるはずなので、やはりまだ、地域間で同一になることの説明にはちょっと足りない部分がありそう、ということ。


ちなみに、上のブログの情報によると、
"how long does it take to write a paper?"
に対するLevittの答えは、
「長くて5日程度」
なんだそうな。。。


締切間近の原稿をここ数週間ずっと終わらせられずにいる自分が、ちょっと情けない。。。