PACDEV2009

PACDEV2009に参加。
プログラムはここ。
http://bss.sfsu.edu/economics/newsevents/pacdev/program2.htm


個人的に今もっとも注目している開発経済学者は、
StanfordSeema Jayachandranなのだが、
http://www.stanford.edu/~jayachan/
彼女のプレゼンも聞いてきた。


授乳に関する論文で、
たとえばインドでは、男の乳児のほうが、女の乳児よりも長く母乳を飲んでいる傾向がある。
男の子供を重視するから長く授乳するとか、
そういうことも考えられるのだが、
そういった従来の考え方とはまったく違った仮説を提唱している。
http://bss.sfsu.edu/economics/newsevents/pacdev/Papers/Jayachandran.pdf


彼女とその共著者が注目したのは、
授乳をしていると生理学的に子供ができにくくなるということ。
なので、女の子供が生まれて、
次に男の子がほしいと思っている場合には、
早く妊娠するために早く卒乳させる。
一方、男の子が生まれた場合には、
それ以上子供を生みたいという需要も少なくなるので、
長く授乳させることになる。


それだけ聞くと、
うーん、理論的にはそんなのもあるかもしれないけど、
実際にはやっぱり男の子供を重視するから長く授乳させてるだけなんじゃないの、
と思いたくなるのだが、
理論モデルのPredictionから、
・後に生まれた子供ほど長く授乳する(それ以上子供を産もうとする誘引が弱くなるため)
・最適な子供の数を超えたところから、子供の数が増えるほどその子供に対する授乳期間が長くなる
といった、
「男の子供を重視するから長く授乳させる」という理論モデルからは出てこないいくつかのTestable implicationが出てくる。


で、実際にデータを見てみると、
まさにそのとおり、
・後に生まれた子供ほど長く授乳する
・最適な子供の数を超えたところから、子供の数が増えるほどその子供に対する授乳期間が長くなる
という結果が見事に出てくる。


授乳をしていると生理学的に子供ができにくくなるので、
将来の出産への需要によって(意識的にせよ無意識的にせよ)授乳期間が影響されている、
というロジック以外には、
なかなか上で出てきた結果を説明するようなロジックは見出せないので、
ここまで見せられると、
「うーむ、はい、そうですか」
と反論できなくなってしまう。


自分の報告のほうはまあまあ。
Berkeleyの院生の友達も何人かできた。
たまたま、いまやっている二つのプロジェクトとぴったり同じ研究テーマを持っている人がそれぞれ一人ずついて、
今後コラボレーションできるかもしれない。
BerkeleyのDavid Levineも、カンボジアでマイクロ保険のプロジェクトをやっていることもあって、
今後もKeep in touchしていこうということになった。
Bruce Wydickとも意気投合して、
将来西海岸にVisitingする際には、
彼がいろいろとアレンジしてくれると言ってくれた。


当初期待していたより、ずっと楽しかったし収穫があった。
とりあえず今抱えているいくつかの論文をきちっと仕上げて、
Econometric SocietyやNEUDCにどんどん参加していきたい。


それにしても、Seema Jayachandran、やるなあ。
彼女のような人にJDEのEditorをやってもらいたい。