メディカル・イーティング

ふと、肺がんに関するサイトを調べていると、
症状や検査方法や治療や手術や生存率などの情報が集められている
http://www.sth3.com/haigan/
とか
http://lung.web.fc2.com/
のサイトで、
「⇒数々のガン患者を完治させてきた食事法」
とか
「癌が改善しなければ全額返金!数々のガンを完治させた食養理論」
とか、
うるさくリンク先が張られているHPがあった。


http://medicaleating.com/


「メディカル・イーティング」と名づけられた食事療法らしく、
「メディカル・イーティングは癌を治癒させることが目的ですが、癌に罹ってしまった原因を追及し、その確かなエビデンスの食事療法で改善をおこなっていくのが本来の姿です。食事療法ですから医師の力は必要としません。カラダの負担もほとんどありません。しっかりとした根拠に基づいた食事改善の結果として、ガンに負けない体作りを目指していく食事療法です。そのため、多くの方が医師に頼らず、自宅に居ながらガンを改善されていっています。」
と宣伝している。


また、
「ガンの部位別に効果的なエビデンス、その根拠に基づくガン患者専用の食事療法で、ガン細胞の進行を食い止め、改善へと向かっていくことは可能なのです。」
とも。


医学の分野では、
Evidence Based Medicine (EBM)が主流で、
Randomized control trialsを最も信頼できるエビデンスとしているが、
RCTとはいかないまでも、
本当に、「メディカル・イーティング」に、統計的な「エビデンス」があるのだろうか。


本当に効果があるのであれば、
なぜ、医師たちの間で口コミで広まったり、研究者が実証して学会で広まったりして、
多くの病院で採用されるようにならないのだろうか。


HPには、
「世の中には科学で解決できないことは山ほどあります。最新の医学とて例外ではありません。」
などと弁明のようなことが書かれているが、
メディカル・イーティングのメカニズムを現在の科学で解明することはできないとしても、
それが本当に効果があったか、統計的に検証することはなんら問題なくできるはずである。


すい臓がんで2年前に手術をした父が、
今度は肺にがんが見つかり、
来週手術が行われる予定になっているので、
本当にメディカル・イーティングが少しでも効果がありそうなものなのか、
Googleで「メディカル・イーティング」を検索してみたが、
ヒットしたサイトのほぼすべてが広告系のサイトで、
あてになるような情報は見つからなかった。


本当に効果があり、本当にがんに苦しむ人々を救いたいと思っているのであれば、
統計的に検証して専門誌に投稿し、
医師たちに本当に効果があるものだと認識させて病院で取り入れてもらうようにするとかすべきなのに、
ネットブックという形で3万円くらいで売り出して、
医師たちは分かっていないんだ、と主張しているのはいかがなものだろうか。
Evidence Based Medicineが主流となった今、
きちっと統計的に検証し、信頼に足るエビデンスを提出できれば(そしてそれもそんなに高度な統計学の知識を要求するわけでもない)、
がん治療を手がける医師たちがメディカル・イーティングを取り入れることはそう困難なことではないはずなのに、
そういうようなアプローチはとらず、
「3万円支払えば、がんを治す方法を教えます」
と、わらをもすがりたい心境のがん患者の心理につけ込んでいるようにも見える方法で宣伝し、
内容も著作権でがちがちに守って外に漏れないようにしているのは、
実際には効果がない方法で金儲けをしようとしているからじゃないかと思えて仕方がない。


実際には、メディカル・イーティングは、本当に宣伝しているような効果があるのかもしれない。
個人的には、そうであったらとてもうれしい(がんの治療法が見つかったということなので)。
本当に効果があるのであれば、
きちっと統計的に検証して、国際的にも影響力のある専門誌で発表し、
全国の病院でそれが実施されるように取り組んでいってもらいたい。