Access to Finance

Handbook of Development Economics Volume 5に載ってる
Karlan and MorduchのAccess to Financeを読んでる。
これまでの研究をおさらいするのにちょうどいい。

http://karlan.yale.edu/p/HDE_June_11_2009_Access_to_Finance.pdf


それから、MorduchのBorrowing to Saveという読み物もおもしろい。
http://financialaccess.org/sites/default/files/FAI_Borrowing_to_Save_0.pdf

Portfolios of the Poorの本の内容がベースだが、
貯蓄組合に55ドル貯金した直後に、金貸しから月利15%/で20ドル借金している女性とか、
年利36%のローンを使って所得フローを生まない金(Gold)を購入している女性の話が出ている。


で、興味深いのは、
なんで20ドル借金する代わりに20ドル貯金額を減らさないんだとか、
なんで所得フローを生まない金なんか購入しているんだと
その理由を聞いているところ。

貯蓄組合に55ドル貯金した直後に、金貸しから月利15%/で20ドル借金している女性が言うには、
“Because at this interest rate I know I’ll pay back the loan money very quickly. If I withdrew my savings, it would take me a long time to rebuild the balance.”


つまり、利子を払わないといけないからきっと早く返済できる、
でも、貯蓄を崩したら、なかなか貯められない、
ということで、
貯蓄を続ける一方、
お金が必要な場合には貯蓄を取り崩さずに金貸しやMFIから借りて、
利子支払い(+貸し手からの催促)をプレッシャーにして自分(あるいはたまったお金を分けてもらおうとする夫や近所のプレッシャー)を律して返済をやりくりし、
資産をためていく、
という心理らしい。


年利36%のローンを使って所得フローを生まないGoldを購入している女性(Khadejaという名前)も、
返済のプレッシャーがあればきちんと返済できるけど、
自分で金を購入するだけの金を貯蓄するのは難しいから、
ローンでGoldを買って資産蓄積しようとしているとのこと。
“if you’re poor, borrowing can be the quickest way to save. Khadeja knew that without some external force to help her, her chances of saving enough money to buy the gold necklace were small.”


フィールドで自分で調査することの魅力は、
経済理論的にきちっと考えるとちょっとRationalじゃないんじゃないか、
という事例に出会って、
実際に人々にそのように行動した理由を聞くことができて、
その理由をうまく体系的に説明するような理論や、
それが実際に社会でどの程度重要なのかを検証する実証研究につなげていけること。
その際、経済理論の枠組みできちっと考えて、経済理論の予測ではこうなるはずなんじゃないか、というベンチマークを持っていないとResearch questionそのものが出てこないので、
フィールド調査を行う人ほど、理論論文をいろいろきちっとフォローしておくべきだと思う。