自分用メモ

ベトナム中部の農村に来ている。
自分用のメモ。


・豚や鶏を飼育している家計が多く、牛を飼育している家計は少ないのは、豚や鶏は、場所がなくても多く飼えるが、牛を飼うにはある程度の場所が必要になるため。
・家畜に関するリスクでは、疫病や価格変動が最も重要で、洪水や旱魃といった降雨量に起因するリスクはメジャーなリスクではない。なので家畜用の天候保険はあまり需要がなさそう。一方で、昨年台風、洪水で作物がだめになったこともあって、農作物をターゲットにした天候保険は可能性があるかもしれない。
・豚の場合、大きくなりすぎたら脂肪ばかりになって売れなくなるので、時期が来たら売るしかない。だいたい生後4ヶ月で売る。価格が低い場合、穀物なら貯蔵して価格が高くなるのを待つこともできるが、豚の場合は時期を逃すと売れなくなるため、その時の価格で売るしかない。価格変動リスクが大きい。
・Morduchの"Borrowing to Save"で書かれていたような、貯蓄を取り崩すと元に戻すのが難しいので取り崩さずに借金する、というような現象は、ここベトナム中部の農村では見当たらなかった。お金を借りるのは、自分の手元のお金がなくなったときで、自分の貯蓄には手をつけずに他からお金を借りる、というのはない。
・だからといって、Morduchが焦点を当てていた貯蓄制約がないわけではない。手元にお金があると使ってしまうので、積み立て型の学資保険に加入して毎月、あるいは毎年お金を保険会社に払っている家計が多い。ただ、これには少なくとも毎月10万ドン(5ドル強)程度は払わないといけないので、そこまでの余裕がない家計には参加が難しい。
・訪問した家計のうち、30%くらいはVoluntaryな保険を購入していたが、そのすべてが貯蓄型の学資保険だった。
・学資保険の高い加入率は、貯蓄制約のせいかもしれない。ただ、近くに銀行があり、理論的にはいつでも貯蓄は可能。ただ、手続きが面倒だったりお金を講座に入れるにも時間がかかるので、使っていないという人がほとんど。
・学資保険は、たとえば、毎年120万ドン(60ドル強)を17年おさめると、その翌年に2500万ドンが受け取れる、という仕組み。現在の銀行の貯蓄口座の利子率は8%らしいので、同じ額を毎月銀行にためると3900万ドンにもなり、利率だけからみたら、銀行の方がよい。このことを明示的に示して、仮想的な質問でどちらを選ぶか聞いてみたが、ほとんどの人が、学資保険のほうを選んでいた。理由は、万一の場合に安心だからとのこと。そういう意味では、学資保険の高い加入率は、保険需要を反映しているともいえる。
・一方で、所得が低い人でも加入できるような、保険料が低い掛け捨て型の生命保険は、どうも売られていない。掛け捨て型には医療保険があるが、強制加入の学生やただで加入できる老人(戦争功労者)、低額で加入できる貧困家計をのぞき、加入家計はほとんどいなかった。
・学資保険に加入したものの、経済的理由で期限前に引き出さざるを得ず、マイナスの利率になってしまっている人も多くいる。DellaVignaがよく使っているような、Partially naiveな個人の想定にフィット?
・多くの家計が借入れを行っており、銀行から借りている家計も多いので、厳密な意味でのCredit constraintに直面している家計は少なそう。Gine, Townsend and Vickery (2008?, World Development)の、Credit constraintによる説明は、あまり妥当ではないかも。また、お金を借りて保険を買うということはない(すでに保険に入っていて、その支払いの時にお金がないので借りることはありうるが)。
・ただ、保険を買わない理由は、ほとんどが、「お金がないから」。もし病気や大黒柱に万一のことがあったらどうするのか、とたずねると、その時はPhai chiu(受け入れるしかない、という意味)。


今回の調査でちょっと驚いたのは、ここ数年で、未熟練労働者(建築現場の手伝い)の賃金もかなり上昇していること。
2004年ころは、ホーチミンでも3万ドン(当時のレートで2ドル弱)だったのが、
現在は、こんな農村でも8万ドン〜10万ドン(4ドル〜5ドル強)、
ホーチミンでは15万ドン(8ドル)。
5〜6年前の4倍になってる。