マイクロ健康保険のマイクロクレジットへのBundling(抱き合わせ)

金曜日のRick Hornbeckのセミナーの後、
Rickと話をする機会があった。


Rickは、Dufloたちと一緒に、
インドのSKSのマイクロクレジット加入者に、健康保険を強制加入する実験も行っている。
具体的には、既存のマイクロクレジットの借り手の一部に、
強制的に健康保険に加入させて毎週の支払いの際に保険料分を上乗せする、
というRandomizationを、村単位で行っている(Treatment:100村;Control:101村)。


で、最近出たその結果によると、
・健康保険を強制加入させても、マイクロクレジットの借り手の更新率に影響はない。
・健康保険を強制加入させたことで、病気になりやすい人が入るようになったという逆選択の影響もない
・なので健康保険をマイクロクレジットに抱き合わせすることは非常にPromissing
ということらしい。
(詳しくは、
http://www.docstoc.com/docs/27309632/SKS-Health-Insurance/
を参照)


この実験は、既存の借り手に対して健康保険を強制にさせているが、
Gin, Xavier & Yang, Dean, 2009. "Insurance, credit, and technology adoption: Field experimental evidencefrom Malawi," Journal of Development Economics, vol. 89(1), pages 1-11
の天候保険の実験では、
マイクロクレジットに天候保険を抱き合わせると、
マイクロクレジットの参加率が30%も下がる、
という結果が報告されているので、
潜在的な新規の顧客に対して健康保険をマイクロクレジットに抱き合わせた場合には、
もしかしたら違う結果が出るかもしれず、ややCautionが必要。


あるいは、Gine and Yangは、参加率が下がった要因として、
保険がない場合にはLimited liabilityで、ショックがあった場合の実質的な支払が少なかったのが、
保険を一緒につけると、そのLimited liabilityがなくなって、
保険料を含めた実質的な支払額が上がるために参加率が下がった、
という議論をしているが、
Gine and Yangは、天候という所得ショックの最大の要因に対して保険をかけているのに対して、
健康保険の場合は、所得ショックの最大の要因ではない分、
Limited liabilityの影響が少ない、ということも考えられる。


ところで、
去年のNEUDCでプレゼンがあった、
マイクロクレジットで貸出後すぐに返済でなく、
2か月の猶予期間を与えた場合に、
それが借り手の投資や返済率にどう影響が与えるのか、
という研究のPolicy noteが出ていた。
http://ifmr.ac.in/cmf/policy_memos/5.%20VWS%20Grace%20Period.pdf
2か月の猶予期間を与えると、
ビジネスへの投資は増えたが、返済率も下がってしまったとのこと。


それと、MullainathanのTEDでのトークが、2ヶ月くらい前にアップされていたので、その紹介。
彼は最近忙しいらしく、
Officeのドアには、
秘書が、アポを取る際の決まりごとについて事細かに書いてある。。。