増える大学院生のフィールド実験

Harvardの学生セミナーに参加していると、
かなり多くの学生が途上国でフィールド実験やフィールド調査をしている。
しかも、サンプル数も、かなり多い。


インドで2008年6月に、特に土地の少ない農家への農業ローンが返済免除になった、
ということを自然実験として扱って、
その1年後のデータを集めた学生グループのサンプル数も数千規模だったし、
この前プロポーザル的にエチオピアでSMSで市場価格の情報を農家やTraderに提供する、
というのも、
村単位で介入する必要上、サンプルサイズが結構大きくなりそうだった。


フィールドでのラボ実験は、
プロジェクト開始からデータを集めて論文を書くまでにそんなに時間はかからないけれど、
Natural field experimentと呼ばれる実際の人々の生活に介入する実験は、
プロジェクト開始から論文になるまでに非常に長い時間を要するので、
できれば理論論文なり既存データを使った論文なりをもっと書いていきたいところ。


時間がかかるという制約にも関わらずフィールド実験が人気があるのは、
自分が検証したい仮説を実際に検証するためには、
既存データではほしい情報がないので、
自分でデータを集める必要があって、
自分でデータを集めるなら、
その仮説をもとにこれは効果があるんじゃないかと考えた政策の効果もついでに測ってみるのは、
そんなに難しいことではない、というのがあると思う。


実験をしない場合には、仮説をいろいろな角度から検証して、
それをもとに、こういう政策が効果があるんじゃないかと推論するのだけれど、
その効果を推論じゃなく、直接測れるので政策インプリケーションがより明確だし、
他の仮説の可能性を排除できるように実験デザインを練れば、
より強力な議論ができるので、
より強いEvidenceが導けるというのは研究上の強み。

やはり一番時間と労力を使うのは、質問表作成と調査員のトレーニング、そして調査の実施なので、
自分でパネル調査する労力を惜しまないなら、
実験までしてしまうのがCost effectiveだと思う。

ただ、フィールド実験は一つの魅力的な分野だけど、
新たな視点を提供するという点では理論の方がよい場合もあるし、
一般均衡効果や実験を使ってReduced formで直接推計できない場合には構造推定を使うべき場合もあるし、
それらのテクニックも磨いていきたい。