マイクロファイナンスのインパクト研究

Microfinance Impact and Innovation Conference 2010
のRegistrationが開始。

http://2010microfinanceimpact.eventbrite.com/

自分も早速申し込んだ。


Speaker陣には、

Abhijit Banerjee (MIT)
Carlos Danel (Compartamos)
Esther Duflo (MIT)
Chris Dunford (Freedom from Hunger)
Erica Field (Harvard)
Xavier Gine (World Bank)
Dean Karlan (Yale/IPA)
Jake Kendall (Bill and Melinda Gates Foundation)
Asim Ijaz Khwaja (Harvard)
Asad Mahmood (Deutsche Bank)
Maggie McConnell (Harvard)
Michael McCord (MicroInsurance Centre)
David McKenzie (World Bank)
Jonathan Morduch (NYU/FAI)
Adair Morse (University of Chicago)
Sendhil Mullainathan (Harvard)
Ross Nathan (Urwego, Rwanda)
Jody Rasch (Moody's Investors Service)
Jonathan Robinson (UCSC)
Rich Rosenberg (CGAP)
Jen Tescher (Center for Financial Services Innovation)
Chris Udry (Yale)
Dean Yang (University of Michigan)

と、豪華なAcademics陣と、実務家たちがそろっていて、
なかなか楽しみだ。


ところで、MicrocreditのImpactのRCTで、
目立った効果が見られない、
という結論がほぼ一致した見方になりつつあるが、
よくよく考えてみると、
Microcreditがそれほど所得向上などに効果がない、
というのは、
かなり妥当なものだというように思えてくる。


多くの途上国の農村には、Moneylenderなども多く存在していて、
まったくお金を借りられないわけではない。
親戚などから借りることもよく見受けられる。
Moneylenderの金利は高いとはいえ、多くの地域で、それほどべらぼうに高いというわけでもない。


今回調査に行ったインドでも、Moneylenderの金利は、多くの場合せいぜい月5%、
月3%というのもよく目にした。
これに対して、MFIの利子率は月1.5〜2%。
Moneylenderからの借り入れ審査がMFI以上に厳しくないのであれば、
MFIがなくても、
投資の収益率が月5%を越えるものはすでに投資されていたはずなので、
MFIによって誘発される投資というのは(リスク回避の話を無視すると)、
せいぜい月2%〜5%の間のもの、
ということになる。
平均を取って、MFIによって誘発される投資の収益率が月3.5%だとすると、
年間でだいたい42%。
所得や消費の分散は結構大きいので、仮に、標準偏差が平均と同じくらいだとすると、
Conventionalな、significance level 5%、 power 20%というレベルで、
この0.42*標準偏差をDetectするのに必要なTreatmentとControlのセルのサイズは、
だいたい75くらいになる(大雑把な計算なので間違っているかもしれない)。
Benerjeeたちの研究では、村レベルのRandomizationで、TreatmentとControlのセルのサイズは50程度だったので、
優位な違いが検出できなくても、別に不思議ではない。


まあ、最後のセルのサイズの話はやや余分な話だが、
もともと途上国の多くの地域で、Moneylenderや親戚からのInformal borrowingはよく見られており、
Microcreditによって誘発される投資というのは、
収益率が、
Informal borrowingからの利子率よりは低く、
Microcreditの利子率よりは高い、
というレベルのものであるはずなので、
長期間の効果はもしかしたら大きいかもしれないが、
1年で生活を劇的に変えるほど大きなインパクトが見込めるというのは、
もともとの金融アクセスがほとんどなかったような特殊な状況でない限り、ありえない話だと思う。