フィールド実験にあうトピック、あわないトピック

新学期が始まって、
ImbensとPakesの授業を取っている。


構造推定の勉強をしたり、
フィールド実験のプロポーザルを書くためのモデルを作ったりしていると、
政策の効果は様々なパラメータに依存してくるので、
いきなり人々を被験者にして結構なお金をかけてフィールド実験組むより、
経済モデルを作って実際にあるデータで推定して、
仮想実験して効果がありそうなことを確かめたうえで実務家に実験の提案をすべきなんじゃないかと思えてくる。


特に、標準的なモデルで説明できそうな話で、かつその結果がパラメータに依存しやすい場合には、
わざわざフィールド実験するより、
あるデータで構造推定して、いろいろな仮想実験を行ってみた方が
環境の違う別の場合のケースも考察できるので、
フィールド実験にはあまり向かないように思える。
結果がパラメータに依存するので、ある地域でのフィールド実験が別の地域にどれだけ適用可能かという意味でも、フィールド実験する意義がかなり減ってくる。
こういう場合は、まず構造推定して、
こんな地域ではこんな介入がよさそうだというのを明らかにしてから、
実務家に政策を提案し、
可能であれば、Randomizeして、モデルの検証もすべきだと思う。


一方で、
デジカメによる教員出席確認など、
これまでにない介入で、効果の予測が困難な場合や、
複数の候補となるモデルがあって、そのインプリケーションが大きく異なるが、
現実のデータからはどちらのモデルが正しいか識別する手段がない場合、
Selectionの問題がどうしてもコントロールできない場合などには、
フィールド実験をする意義が大きくなってくる。


いずれにせよ、フィールド実験は時間がかかるので、
新しいアイディアが出てきたら、
まずきちんとモデル分析をして、
そのうえでどんなデータが必要か、実験が必要かどうか、理論だけで論文にできないかどうか、
など検討していくのがよさそうだ。
何年も前のアイディアがまだ論文になっていないものも多いし、
とにかく理論だけでも書いていこうと思う。
そうしたら、構造推定にも使えるかもしれないし、
使えそうなMoment conditionがいろいろ導き出せるかもしれない。