姉のOutcomeに対する弟の影響

毎週月曜のDevelopment Lunchに初めて参加。
大学院生が発表して論文をBrush upする場なので、
少人数でFriendlyな雰囲気かと思っていたら、
25人くらいいてびっくり。


発表の内容は、
DHSのデータを使って、調査対象の女性のSiblingsの情報を得て、
弟が生まれた場合と妹が生まれた場合とで、
その女性に対するOutcomeがどう変わるか、を検討したもの。


モデルとしては、親が、
・子供の数
・子供の平均的な質
・消費
から効用をえるBeckerタイプのモデルを考えて
親は男の子の方を好むバイアスがある、という特徴を入れた場合に、
子供が男の子だった場合と女の子だった場合とで、
その姉に対する投資がどのように変わるか、というのを検討している。
男の子が生まれた場合、
・限るある資源が、その男の子に振り分けられて、姉への投資が減るDisallocation効果
・男の子が生まれると、もう子供を産まないという選択をする可能性が高くなるので、子供一人当たりに割り当てられるリソースが増えて姉への投資も増えるという所得効果
の二つが考えられる。
で、それを、とりあえずBangladeshとNepalのDHSのデータを使って実証しました、というもの。


モデルの説明の部分では、
Pandeがいろいろと厳しく突っ込んでいた。
モデルがシンプルなだけに、
他に重要なことがMissingされていないか、
本当にモデルが現実を描写するのにふさわしいのか、
というのを、いろいろな可能性を考えながらチェックする、
ということが大事なんだと感じた。


で、実証としては、
避妊技術がなかった1960年以前は、男の子が生まれてもそのあとの子供の数には影響がなかったが、
避妊技術がだんだんでてきた1960年以降は、男の子が生まれるとそのあとの子供の数が有意に減少する、
という一段階目の結果が得られている。
なので、
・男の子が生まれると、もう子供を産まないという選択をする可能性が高くなるので、子供一人当たりに割り当てられるリソースが増えて姉への投資も増えるという所得効果
が働きうる可能性がある。


が、しかし、
姉のさまざまなOutcome(結婚年齢やilliteracyや資産など)については、
1960年代以前も、1960年代以降も、
弟の影響は有意には見られなかった。
1960年以前も1960年以降も有意で、かつその差も有意なら、
避妊技術のなかった1960年代以前はDisallocation効果が、
避妊技術がでてきた1960年代以降は、Disallocation効果+所得効果が働くので、
その差をとったりすることによって
Disallocation効果と所得効果もDisentangleできたりして面白くなる可能性があると思って聞いていたが、
いかんせん、何も有意な結果が出ていないので、
別の国でやってみるなり、別のOutcomeを探してくるなりしないといけない。


いずれにしても、
家計内の資源配分問題について、
Beckerのモデルに少し修正を加えてDisallocation effectとper capita income effectの両方があることを明示的に示して、
それをデータで実証し、かつ避妊技術が利用可能な時と利用可能でないときの差を使って
両方の効果をDisentangleする(年代の効果も混ざってはしまうものの)、というResearch designの可能性は、大変参考になった。