日経のマイクロ健康保険記事

しばらく前の日本経済新聞(10月17日)で、
【インドの医師、貧しい人にも良質な医療を―大勢で安い掛け金 保険創設】
というインドのマイクロ健康保険に関する記事があった。


こちらのページに抜粋がある。
http://seya-yokohama.mypl.net/shop/00000315602/news?d=145837

以下、さらに抜粋:


【インドの医師、貧しい人にも良質な医療を―大勢で安い掛け金 保険創設】
 人口12億人の約4割を占めるインドで、
貧しい人々に良質な医療を提供する病院経営者の活動が注目を集めている。
治療費を払えない人も高度な手術を受けられるようにと取り組んでいるのは、
費用を大勢の掛け金で賄う独自の保険の仕組み。
活動を支えるのは、途上国の治療を根本から変えたいという思いだ。

(中略)

 ナラヤナ・ルダヤラヤ病院がこの医療保険をはじめたのは2002年。
心臓外科医でもあるデビ・プラサド・シェティ院長(57)が東部コルカタである人物と出会ったのがきっかけだった。

 ノーベル平和賞受賞者のマザー・テレサ
実業家の家庭で何不自由なく育ち、英国の病院でも修行を積んだシェティさんの心を揺さぶったのは、
薬を買うお金すらない重病人を温かくみとる、その姿だった。
「患者を所得の水準で区別しない医療をつくりたい」。思案の末にたどり着いたのが、
手術代を全額カバーできる保険の仕組みだ。

 貧しい人が買う「最も安いたばこの値段並み」に掛け金を抑えるため、
より多くの患者を診て手術1件当たりの経費を下げる必要があると判断。
病院床数1000床の同病院を00年に設立した。保険の加入者は急増し、現在400万人以上に上る。

 シェティさんの取り組みに理解を示した州政府が補助金を出す幸運にも恵まれ、
月60ルピーで始めた掛け金は6分の1に下がった。

(中略)

 この保険の仕組みは、隣接するアンドラプラデシュ州の州政府なども採用。
今年7月にインドを訪問したキャメロン英首相はバンガロールまで足を運び、シェティさんの話を聞いた。
規模の拡大で経費を抑える同病院の経営モデルには、医療費の膨張に直面する先進国も関心を寄せている。

(後略)


ここで出てくるShetty医師には自分も会ったことがあって、
素晴らしい人であることには間違いないのだが、
保険の仕組みはかなり美化されている。


Shetty医師が始めたYeshashviniは、逆選択の問題で保険赤字が膨れ上がっているし、
不要な手術をしたり虚偽のレセプトを書いて金儲けしようとする医師も出てきたりして、
一部の地域からは撤退を検討したりもしている。
逆選択の問題については、以前
http://d.hatena.ne.jp/hisakijapan/20090731/1249008708
で書いたのでこちらを参照してほしい。


隣のアンドラプラデシュ州でも似たようなものが作られたが、
結局うまくいかなくて、
J-PALのプロジェクトで、マイクロクレジットと抱き合わせる方法がとられるようになってきている。


実際のところはかなり問題を抱えている保険スキームなのに、
美化一辺倒の記事が掲載されて、
現状直面しているチャレンジなどにまったく言及していないので、
ちょっとコメントしてみた。