Worker Absence and Productivity: Evidence from Teaching

Labor Workshopにて、
Jonah Rockoff, Columbia Universityの
" Worker Absence and Productivity: Evidence from Teaching"
の報告を聞いてきた。


単純労働でない場合は、
欠勤すると、他の人が代替してもその人と同じようにはできないために、
Productivityに負の影響を与えることが想定されるが、
欠勤する人ほどProductivityが低かったり、
Productivityに対する影響が少ない仕事の人ほど欠勤したりなど、
内生性の問題のために、
Productivityに対する欠勤の影響に対するEvidenceは、
途上国におけるField experimentを除いてはほとんどなかった。


そこでこの論文では、
欠勤のタイミング、長さ、欠勤理由が分かるNY市の教師のデータと、
クラスのテストの点数が分かるデータを10年分使って、
教師のFixed effectをコントロールしたり、
欠勤したのが試験前か試験後か、試験の何日前かなどの情報も使って、
欠勤が生徒の数学と英語の点数(教師のProductivity)に与える影響を調べたもの。
学校の先生は、
欠勤の場合、Substitute teacherが代わりに授業をすることになる。
なので、欠勤が生徒の点数に与える影響というのは、
代替が困難なことに伴うProductivityの変化+当該教師とSubstitute teacherの質の差、
ということになりそう。


結果としては、
・試験前に欠勤すると、生徒の点数は低下し、その影響は数学の方が大きかった
・試験「後」の欠勤は生徒の点数には影響を及ぼしていないし、試験前の欠勤は「1年前の」生徒の点数にも影響を与えていないので、上の、欠勤が生徒の点数を低下させたという結果は、そのクラスの特徴や教師の特徴といったUnobservablesがもたらしたものではないということができる。
・試験前に欠勤したことは、担当生徒の翌年の数学の点数にも負の影響を与える。一方で英語の翌年の点数には有意な効果は見られない。
・試験前の欠勤の負の効果は、経験のない教師に関しては小さくなり、英語の点数については有意でなくなるので、代替が困難なことによる負の効果というものが確かに存在している模様。
・ただし、欠勤期間が長くなってくると、負の効果も小さくなってくる。可能性としては、長期の休暇になるとSubstitute teacherも準備をしっかりしたり授業計画を立てやすくなること、学校側も有能なSubstitute teacherを探そうとするインセンティブが高まる、などが考えられる。
・健康上の理由で欠勤した場合は、数学に関しては健康以外の理由で欠勤した場合よりも負の効果が小さくなる。健康上の理由で欠勤する場合はその数日前から具合が悪かった可能性があるので、具合が悪かったことによるProductivityの低下が起こっていたことを示唆。
・試験の21日前や6〜20日前の欠勤よりも、1〜5日前の欠勤の負の効果が非常に高い。
ということなどが示されている。


いちばん興味深かったのは、
最後の結果に関するこの表(煩雑になるのでStandard errorは省略)。

試験21日以上前の欠勤   -0.0010    -0.0003
試験6〜20日前の欠勤    -0.0019    -0.0021
試験1〜5日前の欠勤    -0.0085    -0.0040
「試験期間中の欠勤」   -0.0165    -0.0085


試験の日に欠勤するのが、一番負の効果が高くなっている。
しかも試験1〜5日前の欠勤の2倍。
空欄を残さないようにとかのtest-taking strategiesをリマインドさせただけの可能性もあるが、
正答を教えたりほのめかしたりした可能性もある。
途上国だったら、これ、もっと高くなっているかもしれない。


この論文は、
これまで結構議論されていたけどEvidenceがなかったものを、
良質のデータを使ってもっともらしい推計値を出してきたもの。
単に個人的な趣味だけど、
これまで議論されていたけど決定的なEvidenceがない問題に対して、
データ上の優位を生かしてEvidenceを提供するというスタイルよりは、
これまであまり注目されていなかったことに対して焦点を当て、
人々が物事を見る目を変えることができるような、
道なき道を切り開く研究をしていきたい。
まあ、これは、確かクルーグマンだったか、バリアンだったかが書いていた、
「良い論文とは、それを読んだ後、世界を見る目が変わっているような論文だ」
というのに、多分に影響を受けているのだけれど。