Culture, Institutions and the Wealth of Nations

今学期最後のDevelopment seminarはRoland
大学院時代に彼のEconomics of Transitionの本を読んだものだ。


今回のテーマは、文化と経済成長で、
集団主義よりも個人主義的な文化の方が経済成長にいいという話。


理論部分は内生的成長理論に文化を組み込む、という話だったが、
単純に、
集団主義の方が個人主義よりも生産関数の効率性が高くなるパラメータを導入
・効用関数に平均よりも所得が高いほど効用が高くなる(よってInnovationしようという動機が高くなる)パラメータを導入
しただけで、
そのパラメータを文化と解釈するのが最も適当なのかどうか、
このモデルが文化を組み込む経済成長モデルとして最もふさわしいのかどうかは、
かなり微妙なところ。


実証パートでは、
Growth regressionにIndividualismの指標を入れたもの。
経済成長するほどIndividualismになるという内生性の問題もありうるのでIVを使っているのだが、
そのIVが、血液型。
文化も血液型と同様親から子供に受け継がれる一方、
遺伝の研究では血液型は能力などと相関していないので、
IVの要件を満たす、というロジックだが、
血液型の分布の違いが文化の違いと相関する一方で、経済成長に影響を与えそうな社会に受け継がれた知識やSocial capitalやもろもろ他の要因とは相関しない、
という状況を想像するのは、かなり困難に思える。
ただ、それでも、遺伝子をIVにしたり、大陸別に推計したり、と、
いろいろ試してみてもロバストな結果が出ているので、
一つ一つの推計は怪しいかもしれないけど、まとめてみると文化が経済成長に影響を与えているということは確からしい、と主張していた。


推計の妥当性は非常に怪しいし、理論の新しさも非常にマージナルなもの。
しかしそれでも、「文化の経済学」というのをこれから開拓していきたい、
という意気込みだけは伝わってきた。
たしかに、文化が貿易パターンに与える影響(文化が比較優位に与える影響)とかは、
なぜ日本は製造業が強いのかを考える上でも、興味深いテーマだと思う。